このガイドでは、ACTION GAME MAKERって何?RPGツクールとどう違うの?という方に向けてACTION GAME MAKERを比較形式で説明します。
まず、ACTION GAME MAKERは「アクションゲームツクール」シリーズの最新作品であり、RPGツクールMZやRPG Maker Uniteとは異なるシリーズの作品です。
アクションゲームツクールシリーズについて
ACTION GAME MAKERはアクションゲームツクールシリーズの3作目の作品となります。
初代はアクションゲームツクールという名称で2009年に発売されました。その名の通り、RPGツクールのアクションゲーム版として開発されました。この時点から、ジャンプアクションだけではなくアクションRPGやシューティングも作成可能な多機能ツールです。さらに、Flash形式での出力機能やXBox360への出力機能等を備えた意欲作でした。

二代目のアクションゲームツクールMVは2018年に発売され、現在も継続して発売中の作品です。ノードベースのヴィジュアルスクリプト機能を搭載したことで制作の自由度が大幅に高まり、アクションやシューティングのみならず様々なゲームを制作可能になりました。Nintendo Switch™への出力機能を備えており、アクション、格闘、パズル、RPG等、様々なジャンルの作品が2025年7月現在で60作品がNintendo Switch™で発売されています。(*Nintendo Switch™への出力の新規受付は2025年3月に終了しています。)
三代目であるACTION GAME MAKERは今年2025年6月に発売されたばかりの最新作です。ベースエンジンとしてGodot Engineという、2D機能においてはUnity等の他エンジンに劣らない高性能なエンジンを採用したことで最新の映像表現に対応し、さらに自由度の高いゲーム制作が可能になりました。
ACTION GAME MAKERは現時点ではWindows/HTML5/Androidへのエクスポートに対応しています。将来的にはLinux/MacOS/iOS/Nintendo Switch™への対応も予定しています。
前作「アクションゲームツクールMV」や「RPGツクール MZ」との比較
前提として、コーディング無し、プラグイン無しで一般的に制作できる範囲の比較となります。
(RPGツクールMZはコーディングでエンジンの改変を行えばやろうと思えばなんだってできてしまうためです、また、コモンイベントを駆使してものすごいことをする方もいますがここでは例外とさせていただきます。)
ACTION GAME MAKER |
アクションゲームツクールMV |
RPGツクールMZ |
|
制作可能ジャンル*1 |
制限無し |
制限無し |
RPG、ADV、アクションRPG |
制作可能視点 |
トップビュー/サイドビュー/クオータービュー |
トップビュー/サイドビュー |
トップビュー |
ビジュアルスクリプトの形式 |
ノードベース型 |
ノードベース型 |
リスト型 |
エディターUI*2 |
マルチタスク(モードレス)型 |
シングルタスク(モーダル)型 |
シングルタスク(モーダル)型 |
FPS |
制限無し |
60fps/30fps |
60fps |
2D/3D |
2Dのみ |
2Dのみ |
2Dのみ |
影を伴う光源機能 |
有り |
無し |
無し |
カスタムシェーダー機能 |
有り(GDSL) |
無し |
無し |
あたり判定 |
コリジョンベース |
コリジョンベース |
タイルベース |
ローカルマルチプレイ | 最大8人 | 最大4人 | 無し |
疑似物理キャラクター制御*3 |
有り |
有り |
無し |
出力可能プラットフォーム |
Windows/HTML5/Android |
Windows |
Windows/Mac/HTML5 |
コードを使った拡張性*4 |
高い |
低い |
高い |
*1 制限はありません・・・が、得意不得意はあります。たくさんのオブジェクトを制御するもの(弾幕シューティングやサバイバー系等)やヴィジュアルスクリプトが煩雑になりすぎるもの(シミュレーションゲーム等)は現状不得手です。
*2 シングルタスク(モーダルウィンドウ)型UIとは、一つのウィンドウを操作している間は他のウィンドウを操作できない形式です。操作ミス等が起きづらく、わかりやすい反面作業効率が悪くなる傾向があります。一方、マルチタスク(モードレスウィンドウ)型はUnityやPhotoshop等のツールと同じく、画面上の複数のウィンドウを同時に操作可能なウィンドウです。作業効率は良いですが、操作できる部分が非常に多くなることで習熟が難しくなる傾向があります。
*3 移動やジャンプ、重力等の緻密なキャラクター操作を行う際の制御方式です。RPGツクールはイベント駆動でタイル単位の制御が基本ですが、アクションゲームツクールシリーズはコリジョン同士の接触を扱った疑似物理処理を搭載しています。
*4 ACTION GAME MAKERではGDScriptを使ってGodot Engineの機能にアクセスできます。RPGツクールMZではプラグインやエンジンの書き換えで自由な拡張が可能です。一方、アクションゲームツクールMVは限られたAPIを経由してのみ拡張が可能です。
結局それぞれどういう人におすすめ?
RPGツクールMZがおすすめの人
- ターンベースのRPGやテキストアドベンチャーをツクりたい人
- ゲームのシステムよりも自分の世界観を表現したり、物語を作ることに集中したい人
RPGツクールの良さはなんといっても初心者に易しいことです。ゲーム制作の知識やプログラミングの知識が一切なくとも、なんとなくでRPGやアドベンチャーゲームを作成できるくらいに簡単です。
会話システム、インベントリ、データベース等がちょうどよくプリセットで用意されているためすぐに物語をゲームにしていくことができます。
一方で、オリジナルのシステムを組み込みたい、RPGやアドベンチャー以外を作りたい!となるとコーディングが必須となるという欠点があります。このUIを少し変更したいといったちょっとしたことでもコーディングが必要なことがあります。緻密なキャラクター制御の仕組み等、実装されていない機能を入れたい場合は自分で0から作成する必要があります。逆に言えば、この点はコーディングを受け入れる、あるいは既存のプラグインで作りたいものが作れる場合は問題になりませんので、世界観を表現したり、物語を作ることに集中したい人にとっては最も良い選択肢です。
RPGツクールMZのメリット/デメリット
メリット:習熟が容易。扱いやすい会話システムがある。プラグインや情報が豊富。
デメリット: RPGやアドベンチャー以外は作りづらい。コード無しで制作できる範囲が狭い。
アクションゲームツクールMVがおすすめの人
- オリジナルのゲームシステムをノーコードで作りたい人で、2000年以前のレトロゲーム風の作品をツクりたい人
ACTION GAME MAKERのヴィジュアルスクリプトはアクションゲームツクールMVから発展したものですが、基本的な機能はアクションゲームツクールMVで完成しています。そのため、アクションに限らず様々なジャンルのゲームを自由に作成でき、オリジナルのシステムをノーコードで作成することができます。
昨日プレイしたあのゲームのあのシステムおもしろかったな・・・あれを参考にしてゲームを作りたいな・・・といったときに、ノーコードですぐに作成に取り掛かることができます。
シングルタスク型(モーダル)ウィンドウを採用しており、専用のアニメーションシステムがあるなど、ACTION GAME MAKERよりもUIがとっつきやすくハードルが低い側面があります。セールの割引率が高いため安価に手に入れやすいこともあり、アクションゲームツクールMVは依然有用な選択肢です。
一方で、光源機能やシェーダー機能がないため、高度な映像表現はできません。また、疑似物理システムの判定が厳密ではなく超高速で動かすと壁をすり抜けてしまうことがある。高解像度の画像の取り扱い時に重くなりがちといった欠点があり、昨今制作されている2Dゲームのように高速!スタイリッシュ!美麗!アクションを作るのは苦手です。逆に言えば、そういった処理の必要ないレトロゲーム風作品を作りたい人にとってはこの部分は問題になりません。
また、RPGツクールと比較するとプリセットの設定を組み合わせてすぐゲーム化!とはいきません。サンプルプロジェクト等はあり、参考にはできるものの、原則的にシステムはすべて自分で組み上げる必要があります。会話システムやインベントリシステムはヴィジュアルスクリプトで自分で作る必要がありますし、UIを自由に設定できるということはUIも自分で0から設計しないといけないということでもあります。
アクションゲームツクールMVのメリット/デメリット
メリット: コード無しでキャラクターからUIまですべてを作成できる。専用設計のUIのため比較的扱いやすい。
デメリット: RPGツクールに比べると情報や素材が少ない。最新の映像表現や高解像度の画像が扱えない。拡張性が低くコードを併用しても制作できる範囲があまり広がらない。
ACTION GAME MAKERがおすすめの人
- オリジナルのゲームシステムをノーコードで作りたい人で、他のエンジンに劣らない本格的な作品をツクりたい人
ACTION GAME MAKERの特長は、Unity等の他のエンジンと同等の機能を備えたGodot Engineの2D機能すべてにアクセスできることです。高度な映像表現や環境効果、キャラクター制御、高解像度な画像の取り扱いや2Dボーンも扱えるアニメーション機能等、すべての機能が利用できます。つまり、Godot Engineで作成できるゲームは作成できる=コーディングも含めれば、理論上は今リリースされているようなゲームはほぼ、どんなものでも作成することができます。
ヴィジュアルスクリプトに限った場合でも、Godot Engineの2D機能の多くにアクセス可能です。具体的には、プロパティで制御できる機能であれば扱えます。そのため、前作と比較してもヴィジュアルスクリプトのみで制作可能な範囲も大きく広がっています。
欠点は、Godotの機能へのアクセス性を担保するため、UIがGodotベースのマルチタスク型(モードレス)ウィンドウになっていることです。作業性が高くなっていますが、慣れるまでは設定項目が膨大で目が回る、一部のACTION GAME MAKER機能の最適化が不十分でUXが悪い点があるといった点です。
RPGツクールは言わずもがな、前作と比較しても参入ハードルは高くなっていますが、その分できる範囲は広く、ハードルを超えた際の制作の自由度は非常に高くなっています。
ACTION GAME MAKERのメリット/デメリット
メリット: コード無しでキャラクターからUIまですべてを作成できる。最新の強力な映像表現が扱える。拡張性が高くコードを併用すればほぼどんなゲームでも制作できる。
デメリット: RPGツクールに比べると情報や素材が少ない。マルチタスク型(モードレス)UIのため難解に感じる。
Godot Engineとの比較
ここまでのお話で、Godot Engineの機能を扱えることをPRしてきました。しかし、Godot Engineは無償で入手可能なオープンソースソフトウェアで、ACTION GAME MAKERは有償のソフトウェアです。
無償のGodot Enigneに、無償のプラグインを追加したもので良いのではないか?と思う人もいるはずです。その考えも一部は正しいものです。ここでは、ACTION GAME MAKERにあって、Godot Engineの基本機能としてはないものについて紹介させていただきます。
FSM(フリーステートマシン型)のヴィジュアルスクリプト
最大の違いはこのFSM型のヴィジュアルスクリプトが存在することです。これはRPGツクールシリーズのイベントエディタから発展しており、全くコーディングがわからない人のために設計されています。見た目は似ているのですが、同じノードベースのヴィジュアルスクリプトであっても、Unreal EngineのBlueprintに代表されるようなフローベース型のヴィジュアルスクリプトと、ACTION GAME MAKERのようなFSM型のヴィジュアルスクリプトは全く異なるものになっています。
一般的なフローベース型のヴィジュアルスクリプト
このタイプのヴィジュアルスクリプトではノードは「関数・条件・演算等の処理」です。プログラムを組むために描くフローチャートがそのまま動作するようになっているものと考えてください。制作できる範囲がコーディングと同じくらい広くなる一方、コーディングを理解し、エンジンが扱えるクラス等を理解していないと扱うことができないという欠点があります。つまり、プログラムがわからない人では扱うことができません。Godot3時代に搭載されていたヴィジュアルスクリプトを始め、多くのヴィジュアルスクリプトはこの形式です。
例えば、フローベース型のヴィジュアルスクリプトで「キャラクターが距離300以内に近づくと落ちてくるつらら」のような動きを作るときは以下のような記述になります。
Get Player Character→ Get Location(Self) → Get Location(Player)→ Vector Distance(Self, Player)→ Branch <= 300→ (IF TRUE) Set Physics = true → Set Collision = Enabled
これはあくまで例としての架空の言語ですが、記述内容としては通常のプログラムを組むのと同じように、どのような関数や処理があるのかを理解していることが必要となります。
ACTION GAME MAKERのFSM型のヴィジュアルスクリプト
このタイプのヴィジュアルスクリプトではノードは「オブジェクトの状態」です。「待機」「歩行」等の状態に対して、アクションという形で処理を追加していき、状態の間を条件でつなぎます。「アクション」や「条件」として、事前に処理を作成して実装する必要があるため、制作できる範囲はコーディングには劣り、ヴィジュアルスクリプト自体の開発工数が非常に大きくなるというデメリットがあります。しかし、アクションとして言語化されているためコーディングが全くわからない人でも何の処理をしているのかわかる、より人間の考えに近い処理ができるということで、コーディングが全くわからない人でも扱うことができるメリットがあります。
少し複雑な説明となりましたが、「本当に全くプログラムが出来ない、わからない人でも扱うことができる」ヴィジュアルスクリプトは意外と珍しいということです。さらに、マリオ風等の特定のジャンルのみに特化したものではなく、パズル、RPG等様々なジャンルに対応できる汎用性の高いものとなると非常に珍しいものになっています。
しかし、注意して頂きたいのは、確かに「コーディングの知識は不要」ですが「プログラミング的な思考方法は必要」なので、学習が全くいらないというわけではないということです。
例えば、「キャラクターが距離300以内に近づくと落ちてくるつらら」であれば「距離300以内に近づいたとき、対象:キャラクター」「落下状態に遷移」「落下状態では下方向に移動」「床のタイルに接触すると破壊状態に遷移」「破壊状態では破壊アニメーションを再生」「アニメーションの再生が終わったら消滅」といった処理の複合になるためです。逆に言えば、コーディングが分からない人でも「プログラミング的な思考方法」を学ぶことができるとも言えますし、プログラミング的な思考ができるがコーディングができないプランナーやディレクターといった職種の人は容易に扱うことができる可能性があります。
ヴィジュアルスクリプトと連動したデータベース機能
Godotのデフォルト機能ではデータベースの機能はありませんので自作する必要があります。もちろん、プラグインにはデータベースを作成するプラグイン等もありますが、ヴィジュアルスクリプトと連動しているのが大きな特徴です。
ヴィジュアルスクリプトと連動したシーン遷移機能
Godotのデフォルト機能ではシーン遷移の機能はありませんのでこちらも自作する必要があります。データベースと比較しても複雑な処理であり作成が難しいものでもあります。プラグイン等もありますが、こちらもヴィジュアルスクリプトと連動していることが大きな特徴です。
多様な画像/音源アセット
400種類以上の音源(BGM: 46曲 SE: 263種類 VOICE: 105種類)が同梱されています。
また、サイドビュー用のみですが、9種類の2Dボーン素体、200種類以上のアニメーションや400以上の画像素材があり、これを購入するだけで一通りの素材が手に入ります。
つまり、Godot Engineとの違いは?
非常に珍しいFSM型のヴィジュアルスクリプトがあり、それを使ってゲーム制作をするための一通りの機能や多数の素材がセットになっていることが違いです。つまり、本当に全くプログラムが出来ない、わからない人でもこれを買うだけでGodot Engineを使ったゲーム制作に飛び込むことができるということです。
Godot Engineをそのまま扱うことがおすすめな人
- コーディングが苦ではない人。
- コーディングを学ぶ意思がある人。
- ゲーム制作に必要な適切なプラグインやエクステンションを自分で選び、設定をすることができる人。
こういった方々はわざわざお金を出してACTION GAME MAKERを購入する必要はない可能性があります。
しかし、FSMを使ったプログラミングやプロトタイプ制作に興味がある人や、コーディングを学ぶ意思があるが実行に踏み切れていない人、挫折してしまった人等にとってはACTION GAME MAKERのは価値のあるプロダクトである可能性があります。