RPGツクールとは? 知っているようで知らないその魅力と歴史

RPGツクールは、誰でも簡単にRPGを作れる日本発のゲーム制作ツール。青鬼やIbなどの名作も誕生。今も進化を続け、世界中で利用されています。
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What is RPG Maker? The Charm and History You May Not Know as Well as You Think

「RPGツクールって、名前は知ってるけど……実際何なの?」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?

おそらく多くの人が、一度はYouTubeやニコニコ動画で『青鬼』や『Ib』、『ネタバレが激しすぎるRPG』のようなゲーム実況を見たことがあるはずです。
その動画の説明欄に「RPGツクール」と書かれていて「へえ、そんなソフトがあるんだな」とぼんやり認識したまま、使う機会はなかった──そんな人も少なくないでしょう。
実はその「RPGツクール」、2025年の今もなお進化を続け、世界中のゲームファンやクリエイターに使われている“現役”のゲーム制作ツールです。

この記事では、「名前は知ってるけど、実態はよく知らない」という方に向けて、RPGツクールの歴史や魅力を、わかりやすくご紹介していきます。

 

 

RPGツクールとは?ゲーム制作を誰でも可能にしたツールの原点

RPGツクールは、専門知識がなくても誰もが手軽にロールプレイングゲームを制作できるようにした日本発のゲーム制作ソフトシリーズです。

1990年にアスキーから発売されたMSX2用ソフト『RPGコンストラクションツール Dante』がその第1作であり、これが現在まで続く「RPGツクール」シリーズの原点となりました。
当時はプログラミングができる一部の人しかゲーム開発に関わることができませんでしたが、RPGツクールの登場により一般のファンでも自分のオリジナルRPGを作れるようになり、数多くのフリーゲームが誕生しました。

引用:Danteサンプルゲーム『BADOMA 血塗られた伝説』 一【RPGツクール/MSX】- ニコニコ動画

シリーズ名の「ツクール(Tkool)」は「作る」と「ツール(Tool)」を組み合わせた造語で、その名の通り“作るための道具”であることを示しています。
もともとは国内向けに「RPGツクール」の名前で親しまれてきましたが、『RPGツクールMZ』以降のタイトルは海外名の「RPG Maker」に統一されています。

本記事では、日本の読者になじみ深い「RPGツクール」という呼称で進めていきます。

 

 

歴代シリーズの進化をざっくり振り返る(1988〜2025)

RPGツクール歴代シリーズ振り返り

1980年代末〜1990年代:黎明期と普及期

RPGツクールの源流は1980年代後半にまでさかのぼります。
1988年にはPC-8801向けのRPG制作ソフト『まみりん』が雑誌付録として登場しており、こうした試みがツクールシリーズ誕生の土壌となりました。
正式なシリーズ第1弾『Dante』(1990年発売)以降、PC-9801用『Dante98』(1992年)やスーパーファミコン用『RPGツクール SUPER DANTE』(1995年)といった作品が次々とリリースされます。

1995年のスーパーファミコン版からは「ツクール」の名を全面に押し出し、以降はパソコンと家庭用ゲーム機の双方で展開されていきました。

1997年にはWindows向けの『RPGツクール95』が発売され、以降「RPGツクール」はPCでもコンソールでも親しまれるソフトとして定着していきます。



2000年代〜2010年代:多様化と進化

2000年代に入るとシリーズはさらに改良を重ね、『RPGツクール2000』『RPGツクール2003』といったバージョンが登場しました。これらは当時のPCゲーム創作ブームを支え、数多くの名作フリーゲームが誕生しました。2000年代後半にはPlayStationのような据え置きハードはもちろん、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDSといった携帯ゲーム機向けにも展開し、より多くのユーザーがゲーム制作を楽しめるようになりました。

2010年代にはシリーズ初のマルチプラットフォーム対応となる『RPGツクールMV』(2015年)が登場し、HTML5によるブラウザ出力やスマホ対応など時代に合わせた進化を遂げます。
さらに2018年にはコンシューマー向けに『RPGツクールMV Trinity』が発売され、コンシューマー版とPC版で培われたノウハウが融合した作品となりました。



2020年代:最新世代(MZ・UNITE・WITH)

2020年にはWindows/Mac対応の最新PC版『RPGツクールMZ』が発売され、UIやプラグイン機能の強化によってより快適な開発環境が提供されました。さらにシリーズは新たな方向性にも挑戦しています。

2023年にはUnityエンジン上で動作する異色のツクール、『RPG MAKER UNITE』がリリースされました。
UNITEは従来のスタンドアロンアプリではなくUnityのアセットとして提供されており、Unityの持つ強力な機能をツクール流のノーコード環境で扱えるのが特徴です。
これにより、スマートフォンへのネイティブ出力や高度な拡張が可能となり、ツクールシリーズにも本格的に現代のゲームエンジン技術が導入されました。

そして2024年には家庭用ゲーム機向け最新作となるNintendo Switch用ソフト『RPG MAKER WITH』が登場しています。WITHでは従来の機能に加え、ユーザー同士でマップやイベントデータを共有して「みんなで一緒にゲームを作る」ことができる新機能「アセットシェアリング」を搭載。

まさに2025年現在まで進化を続けており、ツクールシリーズは時代に合わせて柔軟にその姿を変え続けています。

 

 

「RPGツクール」製の名作ゲームが生まれ、語り継がれる

RPGツクールで作られたゲームからは、数多くの名作ゲームが生まれています。
中でも有名なのがホラーアドベンチャーゲームの『青鬼』『Ib』です。


青鬼

引用元:https://store.steampowered.com/app/2934190/_/

『青鬼』はnoprops氏によって制作され、2004年に無料公開されたRPGツクールXP製のホラーゲームで、閉ざされた洋館で謎の怪物「青鬼」から逃げるスリリングな内容が支持されました。
無料公開後、このゲームは動画サイトでの実況プレイをきっかけに爆発的な注目を集め、続編やノベライズ、実写映画化までされるなど、多彩なメディアミックス展開が行われています。


Ib

Steam版:https://store.steampowered.com/app/1901370/Ib/

『Ib』はkouri氏制作のホラーアドベンチャーで、2012年にRPGツクール2000製のフリーゲームとして公開されました。
美術館を舞台に少女が不思議な異世界を彷徨うという独創的な物語と世界観が評判を呼び、公開当時はイラスト投稿サイトpixivに2万点を超えるファンアートが寄せられるほどの社会現象となりました。
『Ib』はその人気の高さから、2022年にはリメイク版がSteamで発売され、2023年にはNintendo Switch移植版も登場しています。


このように、RPGツクール製のゲームから生まれた名作は国内外のファンに長く愛され、今なお新しい形で楽しみ継がれています。
もちろん青鬼やIb以外にも、RPGツクール作品から生まれた名作は多数存在します。シュールな世界観で海外でもカルト的人気を博した『ゆめにっき』や、切なくも恐ろしい物語で知られる『魔女の家』、ネタバレな笑いと感動の王道RPGである『ネタバレが激しすぎるRPG』など、枚挙にいとまがありません。

 

 

ゲーム実況・配信ブームで文化として広がる

2000年代後半から2010年代にかけては、ニコニコ動画をはじめとする動画配信サイトでゲーム実況ブームが起こり、RPGツクール製のフリーゲーム文化はさらに大きく花開きました。


ニコニコ動画ではユーザーがゲームをプレイしながらリアクションや解説を加える「実況プレイ動画」が人気コンテンツとなり、その題材としてホラー系を中心にツクール製ゲームが頻繁に取り上げられました。
たとえば『青鬼』はニコ動やYouTube上の実況動画が話題沸騰となり、関連動画の総再生数が5,000万回を超えるほどの社会現象となりました。
暗闇から突然現れる青鬼に驚く実況者の悲鳴や、視聴者がリアルタイムで書き込むコメントの盛り上がりが相まって、一種のエンターテインメントとして定着したのです。

引用元:【実況】超高速青鬼 Part1 - ニコニコ動画


ゲーム実況者のリアクションを通じて作品の魅力がダイレクトに伝わり、視聴者はそのゲームを実際にプレイしてみたくなります。
結果として、面白いゲームを「遊ぶ人」だけでなく「見る人」まで巻き込んだ盛り上がりが生まれました。

ニコニコ動画のコメント文化や生放送での実況プレイ、さらには後のYouTubeライブ配信などを通じて、ツクール製ゲームは単なるインディーゲームの枠を超えたひとつのムーブメントとなったのです。 

このように、RPGツクール作品はゲーム実況との相性も抜群でした。
特にホラーや謎解き系のゲームでは、実況者と視聴者が一緒に驚き一緒に考察する体験が共有され、作品自体の知名度と評価が飛躍的に向上しました。

 

 

一方で高度なゲームエンジンも登場し、制作環境は二極化

RPGツクールが進化を続ける一方で、ゲーム制作を取り巻く環境もまた大きく変化しました。

2000年代後半から2010年代にかけて、UnityやUnreal Engineといった強力な汎用ゲームエンジンが台頭し始めます。
これらはプロも使用する本格的な開発環境で、3D表現やマルチプラットフォーム展開など自由度の高いゲーム制作が可能になりました。

高度なゲームエンジンを使えば表現の幅は飛躍的に広がりますが、その反面プログラミングや専門知識が求められ、初心者にはハードルが高くなりがちです。
一方、RPGツクールのようなゲーム制作ツールはテンプレートやGUIが充実しており、とっつきやすさという点で優れています。

ゲームエンジン比較表

 

「手軽に・完成まで辿りつける」ツールとしての現代的価値

RPGツクールが近年も選ばれ続けている理由に、「カジュアルにゲームを作りたい」「将来的に本格的なゲーム開発に挑戦したい」という層にとって、最適な入り口であることです。
特に後者の例として、世界的インディーゲーム『Undertale』の開発者も、「RPGツクールに触れたことがゲームを作るきっかけになった」と語っています。

現在のツクールシリーズは、GUI中心の操作でプログラミング不要。
まずは1本、自分のペースで作品を完成させることができるため、ゲーム開発を学びたい初心者にも非常に適しています。
さらに、公式DLCやユーザー制作の豊富な素材・プラグイン、活発なコミュニティも大きな魅力です。

たとえば最新作『RPG MAKER WITH』では、イベントやマップをユーザー同士で共有できる「アセットシェアリング」機能も搭載され、ツールという枠を超えて創作の土台=プラットフォームとしても発展しています。

RPGツクールは、「作ってみたい」気持ちを誰でも形にできる最初の一歩として、多くのクリエイターの背中を押してきた存在なのです。

 

 

まとめ:RPGツクールは“遊び”と“創作”をつなぐ文化である

「RPGツクール」という言葉を、実況動画やフリーゲームで目にしたことはあっても、その中身や魅力まで深く知る機会は意外と少ないかもしれません。
ですが、30年以上にわたり進化を続けてきたこのシリーズは「誰もが簡単にゲームを作ってほしい」という思想のもと、今もなお多くの創作の夢を支え続けています。

本格的なゲームエンジンが主流になった現代でも、「手軽に作れる」「完成までたどり着ける」「仲間と共有できる」といったツクールならではの魅力は色あせていません。
世界的ヒット作『Undertale』のように、まずはRPGツクールから始めてプロの開発者への道を歩んだ例もあります。

素材もノウハウもコミュニティも充実した今、RPGツクールは単なる制作ツールではなく、“誰かの最初のゲーム体験”を支える文化そのものへと成長しています。

ゲームを見る側から、作る側へ。

その一歩を踏み出したいなら、RPGツクールは今もなお、最高の入口になってくれるはずです。

 

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